一樹会長の優しい瞳に見つめられて私は俯くことしか出来ない。
とても大事なものを扱うように優しく一樹会長に抱きしめられる。
それがとても嬉しいのと同時にすごく、くすぐったい。
【一樹】「それで……何を考えてたんだ? お前が考えてたこと知りたい」
そう言われてしまっては、素直に言うしかない。
ゆっくりだけど言葉を選びながら一樹会長にそれを伝える。
一樹会長はどんなに言葉に詰まってもうん、うんと頷きながら話を聞いてくれた。
話しているうちに感情が高ぶって涙がこぼれて来た。
一樹会長と再会した時も泣いたばかりなのに……ダメだな……。
【主人公】「卒業を実感する事が出来なくて……」
【一樹】「ああ」
【主人公】「まだ、高校生でいたいと思ってて……」
うんうんと静かに頷き続ける一樹会長。
【主人公】「でも、そんなんじゃダメだとも思ってるんです。大人にならなきゃって……だから……」
【一樹】「分かった。分かった」
泣いている私を優しく抱きしめてくれる一樹会長。
【一樹】「いいんだよ。そんなに焦らなくて。お前のペースでいいんだ。卒業って言われて、すぐに切り替えられるヤツの方が少ない」
【主人公】「……一樹会長」
抱きしめられていた腕がほどかれて正面から見つめ合う姿勢になる。
【一樹】「俺もゆっくり気持ちを切り替えて行った。お前だけじゃないんだよ。だから、大丈夫だ」
【主人公】「……は、はい」
泣き顔を見られるのが少し恥ずかしくて急いで涙を拭った。
【一樹】「なあ……」
【主人公】「は、はい」
【一樹】「改めて、卒業おめでとう。お前の卒業を祝えて、嬉しく思うよ」
その言葉を聞いてしまったらもうダメだった。
堪えていた涙が、もう一度溢れ出してしまう。